JBpress autographの編集陣がそれぞれの得意分野でお薦めを紹介する連載「RECOMMENDED」。第7回はライターの山下英介さんがジョンロブの「ウィリアム75」を紹介します。

スタイリング=櫻井賢之 撮影=唐澤光也 文=山下英介(初出:2020年11月13日)

ジョンロブが誇る名品「ウィリアム」をベースにつくられた、イヤーモデル「ウィリアム75」。通常モデルと何が違うのか、まずはじっくり見てほしい

改めて〝ジョンロブ〟の理由

 最近、ヤングエグゼクティブ(死語)の間で〝ジョンロブ〟が流行っているらしい。僕が若かった頃の紳士靴愛好家といったら、たいてい学生時代の〝ハルタ〟か〝リーガル〟を皮切りに、〝ローク〟や〝チーニー〟といったリーズナブル英国靴を経由して、〝クロケット&ジョーンズ〟や〝サントーニ〟あたりに着地。それでも満足できない業深き洒落者が〝ジョンロブ〟にたどり着く・・・。という一連の流れを踏襲したものだが、時代は大きく変わってしまった。今の若者はSNSなどで大量の情報を取捨選択できるから、余計な回り道なんてしない。「どうせ買うなら最高のものを」と、一直線に〝ジョンロブ〟に向かうのだとか。

 その行動は確かに正解なのだが、いきなり最高峰を手に入れちゃうと、かえって他と何が違うのかわからない人もいるかもしれない。そこで紳士靴の旧世代にあたる僕が、私見も踏まえて〝ジョンロブ〟のすごさをお教えしよう。

 

ジョンロブの実力をおさらい!

(1)革のクオリティが違う

〝ジョンロブ〟が使う素材は、きめ細かで透明感にあふれた、世界でも最高峰の革である。しかも素材そのものの素晴らしさに加え、その中でもキズやシワを省いた「よいところ」しか使わないから、どこから見ても美しいのだ。素材によっては巨大な1枚のレザーから、1足分しか取らないこともあるという。

繊細かつ有機的なパターンを活かすため、いまだに手裁断で切り出される、〝ジョンロブ〟のレザー。気付く人は稀だが、左右でクオリティの差がない点も、ポイントのひとつだ

 

(2)中身も違う

 安価な靴は爪先やヒールなどに不織布やプラスチック系素材が使われていることが多いが、〝ジョンロブ〟はほぼすべての芯材にレザーを採用。中底には練りコルクが敷き詰められている。最初はちょっと硬く感じられるかもしれないが、形崩れもしないし、一度足になじんでしまえば、その履き心地は抜群。底付けは他の多くの英国靴と同じ堅牢なグッドイヤー製法だが、接着剤をあまり使っていないため、通気性もよいしソール交換のときレザーに負担がかからない。つまり長く履けるのだ。