文=岡崎優子

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世界興行の大ヒットを経て、ついに日本公開

 当初、2020年11月に公開が予定されていた『ゴジラvsコング』だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期。ようやく公開の目途がたち、まずは香港で3月24日、中国で26日に公開、3日間7030万ドル(約77億7184万円)の大ヒット・スタートを記録した。ほか38カ国でも公開。コロナ禍では最高となる、1億2200万ドル(約135億円)の海外スタートを切った。

 当然、北米での期待値は高まり、『TENET/テネット』を上回る3000カ所以上で上映が決定。その一方で、同日、HBO Max加入者には無料配信される異例の公開となった。

 結果的には、週末3日間で約3200万ドル(約35億3768万円)を記録。配信の影響でその後は伸び悩んではいたが、6月23日には1億ドル(約110億円)を突破、全世界では4億4250万ドル(約489億1948万円)超えの大ヒットとなった。

 そしていよいよ、ゴジラを生み出した日本でも7月2日に公開された。もはや世界興収5億ドルも射程内に入ったと言えるだろう。

 

時代を超えた、夢のマッチメイクが実現

 本作『ゴジラvsコング』はハリウッド版「ゴジラ」シリーズの『GODZILLA ゴジラ』(14)、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)と、『キングコング:髑髏島の巨神』(17)をクロスオーバーして描かれた「モンスターバース」シリーズ第4作。日本だけでなく、世界に熱狂的ファンを擁する破壊神ゴジラと、映画史に燦然と輝く守護神キングコングが再び対決するとあり、この企画が発表された時からテンションは上がった。

 思えば約60年前の1962年、「ゴジラ」シリーズ第3作『キングコング対ゴジラ』が日本で製作され、この夢のマッチメイクが実現。東宝創立30周年の記念作品、しかもゴジラシリーズ初のカラー、シネスコ作品とあって、配収3億5010万円、その年の日本映画の興行ベスト・テン第4位にランクインしている。

 『キングコング対ゴジラ』では、南の島で捕獲したキングコングを日本まで海上輸送する途中、脱走したゴジラと休眠から目覚めたゴジラが遭遇し対決する。本作『ゴジラvsコング』でもキングコングは海上輸送され、その途中でゴジラを出迎える。

 アダム・ウィンガード監督も名言しているが、コングを南極に空中輸送するシーンには62年版にオマージュを捧げられ、コングが気球からヘリコプターに変わってはいるが、むき出しのまま運ばれる。

 『キングコング対ゴジラ』で美術を担当していた故・井上泰幸デザイナーは生前、「円谷英二特撮監督の創作の原点でもあるキングコングを日本映画に出演させるということで、現場の熱気も相当なものがあった」と当時を振り返っていらした。今回はハリウッド側が逆に、そんな心配りをしてくれたのかと思うと、ぐっとくる。

 もちろん、62年版はCGではなく、すべてセットと着ぐるみ。撮影用のメインセットのほか、精巧なミニチュアセットがいくつも作られた。当時の特撮を支えた職人の仕事ぶりは日本の誇りだ。ゴジラも硬いゴムからウレタンを使うようになり、口を電動で開閉するためのラジコンが開発されたのもこの作品からだった。