文=岡崎優子

父と娘の深く揺れ動く感情、親子の深い絆、優しいまなざしで見つめ合う親子の情が鮮明に映し出される本作に共感すること必至

オスカー史上最大の番狂わせ!?

 現地時間4月25日。例年より2カ月遅れて、アカデミー賞授賞式が開催された。昨年はコロナ禍のため、多くの話題作が公開延期。地味な作品が揃った感は否めず、視聴率は最低だった前年からさらに58%ダウンした。

 そんな中、行われた授賞式での大きな話題は、オスカー史上初めて作品賞が主演女優賞・主演男優賞の前に発表されたことだろう。今年の主演男優賞には『ブラックパンサー』(18)で一躍スターとなったものの、昨年8月に大腸がんで43歳の若さで逝去したチャドウィック・ボーズマンが、遺作『マ・レイニーのブラックボトム』で受賞することが有力視されていた。

 故人が同賞を獲得するのは、『ネットワーク』(76)のピーター・フィンチ、『ダークナイト』(08)のヒース・レジャーに続き3人目。主催者側も感動的なフィナーレをと、主演男優賞を最後にもってきたことは、容易に想像がつく。

 だが、プレゼンテーターのホアキン・フェニックスが名前を呼び上げたのは、史上最高齢の83歳、『羊たちの沈黙』(91)以来、29年ぶり2度目の受賞となった『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスだった。しかもホプキンスの姿は会場にも、中継地のロンドンにもなく、受賞スピーチがないまま授賞式は終了。肩透かしをくらった視聴者の不満でネットは炎上、伝統を覆してまでも盛り上げようと先走った、授賞式の在り方への批判も集まった。

 この騒動を収めるかのように、後日、ホプキンスは受賞にあたってのメッセージ映像をインスタグラムにアップ。故郷の英国ウェールズから、オスカーを受賞するとは思ってなかったと、驚きを隠せない戸惑いを見せていた。と同時に、あまりにも早く亡くなったチャドウィック・ボーズマンに敬意を表した。

 このインスタグラムに、ヒュー・ジャックマンが「ゴージャスなパフォーマンス」とコメント。ほか、マイケル・ダグラス、アレック・ボールドウィン、ケイト・ベッキンセイル、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アントニオ・バンデラスらが祝福のコメントを寄せた。