文=熊谷朋哉(SLOGAN)写真=下家康弘 ヘアメイク=千絵(HMC)

多面体、MIYAVIの核にあるもの

──実際、MIYAVIの活動内容は本当に多彩で、それぞれを分けられるものではないですね。音楽はもちろん、映画も、ファッションも、親善大使も、やりたいことを全部やって、それぞれが影響し合って、いまの「MIYAVI」ができあがっている。

 そうですね。狙っているわけではなくて、結果的なことですけどね。それは、アメリカに行って、ひとりでいろいろ飛び込んだことから始まっているのかもしれない。今は、時代としても、自分という存在に可能なことは全て挑戦して表現していくことが、さらに大事になってきている気がしますね。より可能になってきているとも感じます。

──その多様な活動の中心にあるものはなんだと思いますか?

 まっすぐかどうか、かな。生きることについて、まっすぐであるかどうか。

──カッコいい。

 それさえあれば、どんな活動であっても結局はひとつのものになると思う。あとは……伝えたいことがあるということかな? 政治でも環境問題でも、本当はそういうガラでもない気がするんだけど(笑)、なにかを、どうわかりやすく噛み砕いて、かつ、どうスタイリッシュに伝えるかが僕の役目なのかもしれないなと。そして、そのためにはなんでもする。なんだっていい。

──「MIYAVI」としての役割。

 だから表面的なひとつのあり方に固執をしているわけでは全くないし、それにこだわる時代ではないと思う。プロフェッションをいくつも持つ時代だというかね。音楽と同時に、様々な活動も、ポピュラリティを持たせて表現していくのが「MIYAVI」の在り方だと思っています。

 

目の前で人が死ぬときに、なにを歌うべきなんだろう?

──状況の変化と、その役割意識の中で、音楽やギターに対する意識の変化はありますか?

 エンタテインメントのカタチも変わってきていますよね。そもそも音楽の消費の仕方が変わってきている。

──どのように?

 たとえば、音楽はエクササイズと一緒に聴くものになっていたりとか、映像と一緒であることが前提になっているとか……。聴かれ方が変わってきている。それによって音楽の存在意義や作り方も変わってくる。こうなってしまうと、どうしても、音楽そのものに対するコンテンツとしての比重は下がらざるを得ない。そうすると必然的に音楽のクオリティも下がりがちになってしまうんですよね。一種の「コンビニ化」が進んでしまうというか。

──そういう状況下、音楽家・MIYAVIはどう戦いますか。

 うーん、とにかく僕自身は音楽として、栄養のある、かつ美味しいものを提供していかないといけないなとは感じていますね。音楽ってすごいんだなと、驚かれるようなミュージシャンでありたい。

 そしてもうひとつ、今が平時ではないということですよね。音楽は、平和じゃないときにどうすべきものなんだろう、なにを歌うべきなんだろう? といつも考えます。もちろん、エンタテインメントと政治が関わらないほうが良いというのはよくわかる。実際それがあるべき姿というか、心からそうあってほしいと思う。でも、決して平和とは言えない世の中で、知らん顔はしていられない。たとえば目の前で人が死んでいるときに僕はなにを歌うんだろう、なにを歌えるんだろう、とか。考えちゃいますよね。

 

ひとりの大人としての責任

──それはすごく重い問題ですよね。究極というか。

 昔はギターが弾きたくて弾きたくて、ずっと弾いていたくて、今、ようやく弾けるようになった。音楽をやり始めて、プロになった。プロになったら、音を作る側としての責任も考えるようになる。そしてその影響力をもって、自分はなにを歌うべきなのかをさらに考えるようになる。音楽には力があると思いますし、それは変わらない。それをどう時代と共に昇華させていくか、このことも、僕たちのミッションであるとも感じます。

──音楽の力をどのように伝えていくか、という話にもなるのかな。

 これは、僕だけじゃない、アーティストの責任というよりも、音楽やエンタテイメントを支える人たちみんなの話だと思います。音楽とかエンタテイメント業界の未来がそれぞれにかかっているから。

──アーティストと同時に、それに携わる業界全体の責任。

 そうですね。そしてもちろん、僕はひとりの父親でもあるし、家族に対する責任も、その未来に対する責任もある。だから、ひとりの大人としていろいろ考えているということですね。こうは見えても(笑)。

 

INFORMATION

9月4日(金)配信:EP「Holy Nights(Lockdown 2020)」リリース

「MIYAVI Acoustic at Billboard LIVE 2020」開催
大阪公演:9月19日(土)20日(日)ビルボードライブ大阪

詳細はビルボードライブオフィシャルサイトへ (http://www.billboard-live.com

 

PROFILE
エレクトリックギターをピックを使わずに全て指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30カ国 350公演以上のライブと共に、8度のワールドツアーを成功させている。2019年7月、ドジャースタジアムで行われた大リーグ始球式での国歌演奏で観客を魅了し、日本、アメリカにて話題騒然となった。アンジェリーナ・ジョリー監督映画「Unbroken」(2016年日本公開)では俳優としてハリウッドデビューも果たした他、国内では「BLEACH」「ギャングース」、国外では「キングコング:髑髏島の巨神」「マレフィセント2」(2019年10月18日、日米同時公開)への出演、モデルとして、Yohji Yamamoto、Y-3、最近では、Moncler Beyond ワールドワイドキャンペーンに抜擢されるなど、各方面でも注目を集めている。映画『Mission: Impossible - Rogue Nation』日本版テーマソングのアレンジ制作、HONDAコマーシャル楽曲、SMAPへの楽曲提供をはじめ様々なアーティスト作品へ参加するなど、国内外のアーティスト/クリエイターから高い評価を受けている。2017年には日本人として初めてUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の大使に就任。2020年4月には最新アルバム「Holy Night」をリリース。また新プロジェクト「MIYAVI Virtual LIVE」をスタートさせ、コロナ禍の状況下においても止まることなく、「配信」という新たな形で表現の場を自ら広げている。2020年6月、GUCCIがグローバルに展開するコレクション「Gucci Off the Grid collection」の広告に起用される。GUCCIの広告に日本人の著名人が起用されるのは初の快挙。常に世界に向けて挑戦を続ける"サムライ・ギタリスト MIYAVI"。今後も彼の活動は止まる事はなく、最も期待のおける日本人アーティストの一人である。

https://www.ldh.co.jp/management/miyavi/