サントリーが7月8日(月)「ビール事業マーケティング説明会」を開催した。酒税法改正の影響で大きな変化が起きているビール業界。今回のサントリーの発表では「サントリー生ビール」「金麦」ブランドの話題が中心だった。
サントリー生ビールでさらなる攻勢をかける
サントリーが開催した「ビール事業マーケティング説明会」で説明を担当したのは、サントリー株式会社常務執行役員 多田寅(すすむ)ビール本部長。まず、2023年10月に2回目の酒税法改正があり、ビールと発泡酒の酒税の差がさらに減少、2026年10月には完全に1本化され、350mlあたり54.25円となることをあらためて確認した。
この結果、減税となったビールでは各社が新商品、限定商品を多数市場に投入。一方、サントリーが「エコノミー」とカテゴライズする発泡酒類は増税となり、厳しい戦いを強いられているのが国内市場の現状だ。
最大の激戦区となるのはサントリーが「スタンダード」とカテゴライズしている分野。サントリーでは2023年4月に新登場となった「サントリー生ビール」ブランドがこれにあたる。2024年3月からは飲食店での取り扱いが始まり、6月末時点で今年の目標値だった15,000店を上回る16,000店での取り扱いを達成したという。そこで今年の計画を2万店での取扱に上方修正し、お店での接点を増やして家庭での消費もさらに伸ばしたいと説明した。
今年の販売目標値は600万ケースで変更なし。上半期の実績は250万ケースとのことで、今後が勝負どころだ。多田氏は、この先1000万ケースレベルに行くべきブランドであって、2024年に600万ケースの目標はどうしても達成したい、と意気込みを見せた。
金麦も強化
業界全体が伸びているビールに対して、ダウントレンドが見込まれているのが発泡酒などが属する「エコノミー」カテゴリだが、サントリーはこのカテゴリに「金麦」ブランドを持っていることで、かなり踏ん張りが効いている。発泡酒、新ジャンルなどを含むビール類全体で見た場合、このカテゴリはダウントレンドと言いつつも量的シェアは依然ビールすべてを足したよりも多く(2023年のサントリーの実績ではビール2349万ケースに対して金麦ブランドは3289万ケース。2024年上半期でも1082万ケースに対して1416万ケース)サントリーはそうやすやすと縮小に甘んじるつもりはないようだ。
金麦の目標値は3160万ケースで据え置き、下半期には新規性のある限定商品を発売する、とした。
今回の発表の目玉も金麦ブランドの新商品で、それが『金麦サワー』。
食事に合わせるお酒としてビール類とRTDを併飲する人が、この5年間で約1.5倍に増加している、という調査をもとに、2杯目にも「金麦」を選んでもらいたいと開発したという。今年4月に北海道限定で発売して好評だったことから、10月15日(火)から、パッケージを若干変更して全国数量限定発売を決定したとのことだ。
サワーの味わいを香料や甘味料を使用せず、ビールの醸造技術で実現したというこの金麦サワー。金麦ならではの「旨味麦芽」にシトラホップと希少なレモンドロップホップを使用しているという。
説明会の会場では実際に試飲できたのだが、説明の通りで、特に香りに、シトラスのニュアンスが感じられた。味わいは爽やかでありながらも、十分にしっかりとしたビール系の旨味があるので、上の写真のように氷を入れても、美味しく飲めるだろう。2024年5月にリニューアルした「ビアボール」を含めて、ビール類のなかでも比較的自由な商品が登場するブランドとしても期待ができるのかもしれない。
多田氏は現状の変化が落ち着いてくれば、各カテゴリには一定の需要、役割があるのだから、発泡酒や新ジャンルのシェアがずっと縮小し続けることはないはずだとして、今後、緩やかにビールとシェアを分け合い、2030年には50:50のパーセンテージになるのではないか、という見通しを示した。