文=渡辺慎太郎

現行モデルで4代目となるロードスターは、約30年で累計100万台以上を売り上げた。メルセデスやBMWが初代ロードスターの人気ぶりに驚き、SLKやZ3を慌てて開発したと言われている

ガイシャ」は「ガイジン」の兄弟語?

 いまでこそ「輸入車」と呼ぶ人がずいぶん多くなったものの、依然として「ガイシャ」という単語を耳にする機会も少なくありません。「ガイシャ」っていうのはおそらく「ガイジン」と兄弟語ではないかと勝手に想像しているのですが、いずれせによ「よそ者」や「外様」といったちょっと差別感の漂う表現だと思っています。ニュースなんかでも、カローラが道端で炎上したら「乗用車が炎上」となるのに、メルセデスのCクラスぐらいでも「高級ガイシャが炎上」と報道されたりしますよね。カローラが炎に包まれている映像を見ると「あららかわいそうに」と同情する気持ちが湧いてくるところ、それがメルセデスだと「あーあご愁傷様」とどこか突き放した感じになったりする傾向がうかがえます。

 「ガイシャ=高級車」という方程式も根強く残っています。ガイシャが本当に高級車だった時代はとっくの昔に終わっていて、例えばフォルクスワーゲンのup!は165万2000円から購入できるので、下手な軽自動車よりもよっぽど安かったりするし、ましてや中古のガイシャならロールス・ロイスでも300万円台の物件が普通にゴロゴロしています。でも、そういう実態はどうやら世間に広く周知されていないようで、「ガイシャ=高級車」に加えて「=金持ち」という見え方もされているやに見受けられます。

 仕事柄、自動車メーカーから広報車を借りて、それに乗って帰宅することもしばしばなので、ウチの駐車場にはマクラーレンがとまっていることもあればワゴンRが鎮座している場合もあります。たまたまいろんなガイシャを1ヵ月ほどの乗り継いだ後にダイハツ・ミライースを拝借した時のこと。これは後から聞いた話なのですが、ご近所では「ワタナベさんとこ、なんだか羽振りがよかったのに突然軽自動車になってたわよお。いろいろ大変なのねえ」と噂になり、ウチの経済状況をたいそうご心配いただいたそうです。自家用車はオーナーの財布の中身を写す鏡のようになっているのかもしれません。

 

輸入車を手放さざるを得なくなる人もいる

同じくミッドシップ・レイアウトを採ったホンダ・ビートの後継車的位置付けでもあるS660は、運転が楽しめることを最優先に開発された。CVTの用意もあるが、S660の場合は断然MTがお薦め

 「ガイシャから乗り換えても恥ずかしくない日本車って何ですか?」と聞かれたたことあります。日本車に乗ることが恥ずかしい前提の質問にちょっとどうなんだろうと思った反面、輸入車には前述のような見られ方が蔓延しているので、なんとなく分からなくはありません。実際、似たような質問はよく聞かれます。さまざまな事情や都合で、輸入車を手放さざるを得なくなる人は少なからずいるみたいですね。

 マツダ・ロードスターは、輸入車から乗り換えても正々堂々としていられる筆頭でしょう。もはやロードスターはマツダの1車種というよりも、“マツダ・ロードスター”としてひとつの立派なブランドとして確立しています。FRとして理想的パッケージと車両重量約1トンという軽量化を両立。手頃な値段で気軽に楽しめる2シーターオープンスポーツカーは、のんびり流すドライブも本格的なスポーツドライブにも対応可能。老若男女を問わず、誰が乗ってもそこそこ様になるのも、このクルマが世界中で愛される理由のひとつです。

 同じ2シーターオープンスポーツカーのホンダS660もまたお薦めの1台です。何より、輸入車から乗り換えても臆することなく乗れる軽自動車なんてS660くらいではないでしょうか。エンジンをキャビン後方に積むミッドシップレイアウトにより、類い希なる旋回性能を有しています。本当に痛快によく曲がります。日本の道路事情では、軽自動車くらいのエンジンパワーのほうが余すことなく使えるので、普通の運転スキルでもそのポテンシャルを十分に発揮できるでしょう。黄色いナンバープレートにちょっと抵抗がある人も、いまなら2020東京オリンピック・パラリンピックの開催を記念した“白い”特別仕様ナンバープレートの申し込みができます。ただし5月末時点では2020年9月30日までの期間限定なので、興味のある方はお早めに。

 ランドローバーの実験施設には世界一過酷とも言われるオフロードのテストコースがあって、ランドローバー以外のクルマでそこを最後まで走れたのはメルセデスのGクラス、ジープ、そしてトヨタのランドクルーザーだったそうです。通称“ランクル”が世界屈指の走破性や耐久性を有しているのは、中東諸国での抜群の人気を誇ることからも明らか。いっぽうで、搭載するV8は過去にレクサスLSなどにも採用された振動やノイズの少なさに定評のあるエンジンで、本革シートの内装と相まって、市街地ではちょっとした高級車気分も味わえます。乗車定員は8名なので、いざとなればミニバンの代役も。日本でもっとも自動車泥棒に狙われるクルマ(そのほとんどは海外へ輸出される)という不名誉な称号も、ワールドワイドで認められたクルマの証とも言えます。

 この3台なら、輸入車から乗り換えてもご近所に不要不急な不安を抱かせずに済むと思います(多分)。

「砂漠も走れて壊れず、何よりエアコンの効きが抜群にいい」というのが中東でのランクルの評価。V8を搭載していることや性能や機能性を踏まえた上で輸入車の競合と比べると、この価格はお買い得