スタイリング=櫻井賢之 撮影=長山一樹(S-14) グルーミング=HORI(BE NATURAL) 文=山下英介

無駄を極限まで貫いたミニマムなデザインが〝ボッテガ・ヴェネタ〟の真骨頂

新たなるラグジュアリーの伝道師

 2018年に〝ボッテガ・ヴェネタ〟のクリエイティブ・ディレクターに就任した、若き英国人デザイナー、ダニエル・リー。決して周囲に誇示しない、知的なラグジュアリーを追求してきたこのイタリアブランドのアイデンティティを、彼は未来へと発展させている。

 軽量な「ザ・ペーパータッチナイロン」をはじめとする、新しいバッグコレクションを発表すると同時に、ブランドを象徴するアイコンだった編み込み技術「イントレチャート」は、ニットなどの洋服にも採用。その洗練されたデザインとクオリティの高さは、早くもハイセンスな顧客たちを虜にしている。

 

ジェンダーレスと男らしさとのコントラスト

ジャケットはダブルブレストながらフロントボタンがついておらず、それが美しいボリューム感を生み出す秘訣となっている。レザーショーツはウエストにゴムが入っており、そのはき心地は抜群

 2020年スプリングコレクションにおいて、そんなデザイン思想をさらに進化させた〝ボッテガ・ヴェネタ〟。大胆なビッグシルエットやしなやかで上質な素材、アシンメトリーな胸元のデザインによってジェンダーレスなムードを漂わせつつ、対極にあるミリタリー要素を組み合わせることによって、鮮烈な印象をかき立てている。

 

知的な男だけがわかる、新しいアイコン

ナイロンキャンバス生地はストレッチ性もあり、着心地は抜群。胸ポケットに施されているのが、新しいシグニチャーとなるディテール、トライアングルのモチーフだ

 ハリのあるナイロンキャンバス素材を使ったジャケットと、キュロットのようなワイドシルエットのレザーショーツという写真のコーディネートも、そんなドラマチックなコントラストが楽しめる、見逃せないスタイルだ。そこにはもちろん、近年流行のブランドロゴなどは存在しない。ジャケットの内ポケットを引っ張り出したような意匠を胸ポケットにあしらったトライアングルのモチーフや、遠目にも上質さが伝わるソフトなラムレザーだけが、〝わかる人にだけわかる〟アイコン。そのミニマリズムは洗練の境地に達している。

 近年ではウィメンズとの合同ショーがお約束になっている〝ボッテガ・ヴェネタ〟だが、ダニエル・リーが生み出すメンズジャケットの世界を、もっと見てみたい! と思うのは筆者だけではないだろう。