文=酒井政人

2022年1月3日、第98回箱根駅伝、鶴見中継所で 中村唯翔からタスキを受けとる中倉啓敦(ともに青学大) 写真=松尾/アフロスポーツ/日本スポーツプレス協会

前回大会は青学大が優勝

 前回大会は青学大が10時間43分42秒という驚異的な大会新記録で突っ走り、今季の出雲駅伝と全日本大学駅伝は駒大が大会新V。今大会の登録選手上位10人の10000m平均タイムは駒大が史上最速の28分24秒91で、青学大も28分25秒11と僅差につけている。2023年の正月は駒大vs.青学大の〝2強対決〟が非常に熱い。果たして、勝つのはどちらなのか。

 駒大は全日本Vメンバー8人と、出雲駅伝の6区で区間賞を獲得した鈴木芽吹(3年)、前回5区4位の金子伊吹(3年)。青学大は前回のⅤメンバー7人と出雲1区3位&全日本1区2位の目片将大(4年)、出雲2区4位&全日本4区2位の横田俊吾(4年)らが出走候補になる。

 これまでの起用を考えると1区は駒大が全日本1区4位の円健介(4年)、青学大は目片が有力か。ふたりは全日本で直接対決しており、目片が9秒先着している。

 花の2区は前回に続いて、田澤廉(4年)と近藤幸太郎(4年)が濃厚。ふたりは学生駅伝で4回続けて対決している。いずれも田澤が勝利しており、昨年の全日本7区は18秒、前回の箱根2区は56秒、今年の出雲3区は1秒、同全日本7区は14秒という差をつけた。ただし、直近の全日本は追いかける近藤が前半で田澤との差を詰めるなど、これまでとは違う展開を見せている。

 田澤は近藤をさほど意識していないが、近藤は田澤を強く意識している。昨年の全日本7区はほぼ同時に走り出すと、近藤は田澤の背後にピタリとつけた。1区走者はほぼ互角でエースの実力差も小さい。1区の展開次第ではあるが、2区終了時で駒大が20~30秒リードする状況ではないかと予想する。そうなると2強対決は3区がポイントになるだろう。

 

前回は大差がついた3区はどうなる?

 前回は3区で駒大・安原太陽(3年)が区間16位と失速。区間歴代3位と快走した青学大・太田蒼生(2年)に3分01秒という大差をつけられて、駒大は優勝争いから脱落した。青学大は前回に続いて太田を起用するのか、それとも岸本大紀、横田俊吾ら4年生に託すのか。駒大はここに3種目で高校記録を塗り替えた佐藤圭汰(1年)の起用が考えられる。出雲と全日本で青学大の選手に完勝したスーパールーキーが3区で再び、ライバル校を突き放すことができれば悲願の3冠に大きく近づくはずだ。

 さらに駒大は右ふくらはぎを痛めた影響で全日本を欠場した鈴木が無事に登録された。鈴木は10000mで日本人学生歴代3位(27分41秒68)のスピードがあるだけでなく、上りにも強い選手。良好な状態で本番を迎えることができれば、青学大を蹴散らすだろう。本人は2区を希望しているが、準エース区間の4区で出走するかもしれない。

 一方の青学大はとにかく箱根駅伝へのピーキングが抜群だ。前回、ほぼ無名のルーキーだった太田が3区で大活躍したように、意外な選手が想像以上の快走を披露してきた。今回も3区でトップを奪うことができれば、連覇に向けて最高の流れになるだろう。

 山上り5区には両校とも前回好走した経験者が残っている。青学大は前回3位の若林宏樹(2年)を軸に脇田幸太朗(4年)と黒田朝日(1年)が候補に挙がる。さらに山下りの6区には西川魁星(4年)、若林、脇田がスタンバイしている。爆発力こそ感じられないが、安定した走りが期待できそうだ。駒大も新たな人材が6区を下ることになり、山の状況は似ている。

 復路に関してもさほど戦力差がないと見ていいだろう。駒大はハーフマラソンで日本人学生最高記録を持つ山野力(4年)と全日本8区で区間賞を獲得した花尾恭輔(3年)が復路の主要区間に入るのではないだろうか。青学大は9区と10区の区間記録保持者(中村唯翔、中倉啓敦)がいるとはいえ、追いかける立場になると、前回のような快走を再現するのは難しい。3区で明らかな差がつかない場合でも、8区終了時には勝負の行方が見えてくるはずだ。