一般社団法人 SD BlueEarth・青い地球を育む会主催、ワンワールド・ジャパン提供協賛で開催した、プラスチックゴミ問題についてさかなクンと子供たちが一緒に考えるパネルトークの様子。右端 は SDGs・環境対応について皆さまと共に考えるために制作したキャラクター、「すすめ!さかなクン」 

年々増え続けている海洋プラスチックゴミ(以下海洋プラゴミ)。2050年には世界中の海で泳ぐ魚の重量よりも、海洋プラゴミの重量の方が増えてしまうという報告*もされている。美しい海の環境と、貴重な海洋生物・海洋資源を未来に残していくために、海洋プラゴミ削減が急務だ。一般社団法人SD BlueEarth・青い地球を育む会が立ち上げた『プラギョミ0(ゼロ)プロジェクト』は、以前から海を守る活動に力を注いできたさかなクンと一緒に海洋プラゴミ問題について考え、ゴミの削減や再資源化に取り組もうという取り組みだ。東京夢の島マリーナで開催された『さかなクントークショー・パネルトーク』の模様を交えながら、『プラギョミ0プロジェクト』を紹介する。

*WWFジャパンW E Bサイト「海洋プラスチック問題について」
 https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

 

海洋プラゴミが増えるとなにが起こるのか?

 10月1日(土)と2日(日)の両日、東京夢の島マリーナでは『東京夢の島マリンフェスティバル+エンジョイ魚まつり』が開催され、多数の家族連れで賑わった。この催しを舞台に、SDGs・環境対応について皆さまと共に考えるために制作したキャラクター「すすめ!さかなクン」の発表を兼ねた『さかなクントークショー・パネルトーク』と、ゴミの再資源化 実験が行われた。 

 東京夢の島マリーナのマリンセンター会議室には、ワンワールドジャパン提供協賛のパネルトーク 『さかなクンと考える ―プラギョミさんとリサイクル―』に参加するため子供たちと保護者、約30人が集まった。 

大好きなさかなクンに質問する参加者

 司会進行役は、一般社団法人SD BlueEarth・青い地球を育む会のアドバイザーを務める、ニューホライズンコレクティブ合同会社の今泉睦氏。さかなクンのほか、株式会社ワンワールドジャパン東日本統括本部長の遠山紘輝氏と、認定NPO法人グリーンバードの福田圭祐氏パネリストとして加わった。

 今泉氏はまず、このまま海洋プラゴミが増えると、2050年には海の中で泳いでいる魚の重量よりも、海洋プラゴミの方が重くなってしまうことを子供たちに話し、海洋プラゴミが増えるとどういう問題が起こるかさかなクンに尋ねた。

 さかなクンは、ホワイトボードに絵を描きながら、お魚や、クジラやイルカ、ウミガメや海鳥などが海洋プラゴミを食べてしまうこと、海洋プラゴミが塩分や紫外線などによって劣化し、細かく砕けたマイクロプラスチックを小魚がプランクトンと一緒に食べてしまうことなどを分かりやすく解説。気候変動に伴う海水温の上昇により、サンマの回遊ルートが変化して日本近海から遠ざかり、サイズが小さくなったり漁獲量が減ってしまったりしていることにも触れた。

海洋ゴミを減らすには陸地のゴミを減らすべし

 次に今泉氏は「海洋ゴミの約8割が陸地から流れてきている」ことを話し、ポイ捨てゴミを拾う活動を20年前から続けているNPO、グリーンバードの福田圭祐氏を紹介した。

 福田氏が所属しているグリーンバードは、「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに活動している、東京・原宿表参道発のプロジェクトだ。現在では、全国各地から海外へと活動の幅が広がっている。

グリーンバードの福田氏は、ビーチクリーンで回収したプラスチックのアップサイクルの例を子供たちに説明した

 福田氏は参加した子供たちに公園のベンチや草むらの中にゴミが多く捨てられていることを説明。なかなかゴミの量が減らないことに触れ「街中でゴミをポイ捨てしづらい雰囲気を作ることが大事」だと強調した。

 グリーンバードは海での活動も積極的に行っている。その例として福田氏は江ノ島で行っているビーチクリーンのプロジェクトを紹介した。このプロジェクトでは、海岸で拾ったプラスチックゴミをコースターや海亀のプラモデルにアップサイクルしている。

 自分が拾ったゴミが新しい生命を吹き込まれ、生まれ変わる。海亀のプラモデルを見た子供たちは、捨てられたゴミが新しいモノに再生できることを実感し、目を輝かせていた。

プラゴミから石油資源ができる

 次に今泉氏は、ゴミの新しいリサイクル方法について、ワンワールドジャパンの遠山氏に発言を求めた。

 ワンワールドジャパンが開発した『アーバンリグ』は、塩素や紫外線の影響で従来は燃やすか埋める以外の再利用が難しかったプラゴミを、石油資源に変えることができる機械だ。

ワンワールド・ジャパンの遠山氏は子供たちに、ゴミからエネルギーを取り出せる未来を実現して欲しいと呼び掛けた

  最大600度になる過熱水蒸気を用いてプラスチックを蒸留気化し、冷却することで油化する。こうして抽出した石油を再処理することで、重油、軽油、ジェット燃料、ガソリン、ナフサを作れる。

 この機械の優れている点は、ゴミを分別することなく炉の中に入れ、資源に変えることができる点だ。遠山氏は「金属やガラスなどの無機物は炉の中に残り、有機物は炭になり、石油由来のプラスチックは全部油に変わります」と説明する。

 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に登場し、ゴミを燃料にしている『デロリアン』のタイムマシンを例に挙げ「皆さんには、このデロリアンみたいにゴミから新たなエネルギーを活用できる、未来の世界を創造していってほしい」と語った。

 アーバンリグは現在日本国内で7機稼働しているほか、タイのリゾート地、サメット島でも実証実験を行っているという。

ワンワールドジャパンの伊藤氏は、アーバンリグを設置すれば自給自足のリゾートアイランドが実現できると説明する

 ワンワールドジャパン代表取締役CEOの伊藤智章氏は「島に漂着ゴミが来る。リゾートホテルからゴミが出る。それを油と炭に変える。その油で発電し、フェリーを動かすことができる。炭はホテルのバーベキューの燃料に使える。熱を使って海水を真水に浄化することもできる」と述べ、アーバンリグを設置することで自給自足のリゾートアイランドが実現できると強調する。

「プラギョミ」さんは悪者なのか?

 『プラギョミ0プロジェクト』ではSDGs推進キャラクター「すすめ!さかなクン」と海洋プラギョミ図鑑が大きな役割を果たしている。両方の制作に携わった浜島デザイン株式会社の浜島達也氏は、SDGsの目標14に掲げられている「海の豊かさを守ろう」について考えた時、「一番クリティカルな問題はゴミ。中でもプラスチックゴミの脅威」だと思い至ったという。

プラギョミ0プロジェクトのパンフレットに掲載されている海洋プラギョミ図鑑。海洋ゴミそれぞれに親しみやすいネーミングとストーリーを与えることで、ゴミに対する意識を変えることが目的だ

 浜島氏はこのプロジェクトに取り組むにあたり、東京荒川の河川敷でゴミ拾いのボランティア活動を行っている荒川クリーンエイド・フォーラムの催しに参加した。そして、河川敷に密生している芦をテニスコート半面ぐらい刈ってゴミ拾いをしてみると、ありとあらゆる種類のプラゴミが散乱していて、衝撃を受けたと振り返る。

 浜島氏はその時、「プラゴミって何かネガティブなものだったり、処分しなければいけないものだったり、人間から嫌われているけれども本当は違う。もともと材料や原料は地球の一部だったわけだし、それを人間の都合で製品化して、人間の都合で捨てて、勝手に人間が困っているわけだから、プラゴミをポジティブなものにしよう」と考えた。

「すすめ!さかなクン」と海洋プラギョミ図鑑をデザインした浜島氏。プラゴミを「捨てるもの」ではなく、「救うもの」にしたいと語る

  そして、「さかなクン流に『プラギョミ』と呼べば、愛着が湧いて、プラゴミに対する見方や意識が変わるんじゃないか。プラゴミは捨てるものじゃなくて、救うものになるんじゃないか。みんなのプラゴミに対する意識を変えたい。そのためにプラギョミさんのシリーズキャラクターを作った」と説明する。

 さかなクンは、プラゴミの問題をひとりひとりが他人事ではなく、自分の事として考えていかなければならないと感じている。

さかなクンはみんなが一緒に海洋ゴミ問題について考え行動を起こすことで、明るい未来が開けると語る

「さかなクンも皆さまとギョ一緒に考え、取り組み、続けることが大切だと思います。プラゴミというと悪者というイメージですが、もともとは、生活の中で必要なものとして生まれてきたはずです。それが本来ではない場所に捨てられることによって深刻な環境問題になっています。プラゴミへの考え方や扱い方を変えることができれば明るい未来につながると思います」

東京夢の島マリーナの「東京夢の島マリンフェスティバル+エンジョイ魚まつり」の会場で『アーバンリグ』を使ったゴミの再資源化実験が行われた。写真は『アーバンリグ』の前に集合した関係者の皆さん