文=松原孝臣 写真=積紫乃

放送にあたっての制作ノート。右ページにはリスナーからのリクエスト数の途中経過を記した「正」の文字が

世界中から1200通を超える反響

 当初、異色ともされた番組は、今年の5月に放送されると大きな反響を呼んだ。好評を受けて9月23日に放送された第2弾もまた、好評を博した――ラジオNIKKEIで放送された『こだわりセットリスト特別編・羽生結弦選手特集』である。羽生結弦がプログラムで使用した曲をセットリストとして構成した番組だ。

『こだわりセットリスト』は、あるアーティストやジャンルに強い社員が少しマニアックな切り口でセットリストを作成し、トークなしのノンストップ形式で送るという内容の番組で、月曜から金曜までレギュラー放送されていたが今年4月に終了。現在は週1回(火曜19:00~19:30)に「特別編」として放送されている。羽生の特集は、それを75分に拡大し行われた。

 異色とされたのは、同局とフィギュアスケートの縁は薄いと思われていたことに由来する。だが、いざ第1弾を放送すると、ラジオ放送の配信サービス「radiko」における5月のアクセス数でも全国で上位にランキングされるなど大きな反響を得た。放送にあたって募集したメッセージには中国や韓国、アメリカ、ペルー、ベルギー、モンゴル、カナダ、台湾、香港など世界中から1200通を超える反響があったという。

 第2弾が放送されたのは9月23日だ。

「今回も放送が終わった後にたくさんの感想をいただきました。目にした限りではマイナスな意見というのが1つもなかったです」

 そう語るのは、番組を企画し、出演したアナウンサー藤原菜々花だ。ラジオNIKKEIに2020年に入社、3年目を迎える。幼少期からフィギュアスケートのファンであり、中でも羽生は学生時代から熱心に応援してきた。

 フィギュアスケートの番組を立ち上げた原動力は何だったのか。この番組がいかにして好評を博することになったのか。

 まずは第2弾の製作の背景とともにたどる。

 

まずはオープニング曲とエンディング曲から

「番組が完成したのは、放送日当日の午前4時過ぎでした」

 藤原は笑顔で振り返る。放送開始はお昼の12時30分からであることを思えば、ぎりぎりまでかかったように感じられる。

「具体的なコンセプトを決めるのが苦労した点です。コンセプトが決まらないとそもそも選曲ができないんです」

 考えに考え、ようやく固まったのが9月初頭のこと。

「最終的に固めたのが進化と未来へ。羽生選手は未来へ向かえば向かうほど進化されているイメージがあります。そういうセットリストにできたら、と」

 第2弾にあたって、第1弾と違う点は曲順を明確な意味とともに並べたことにあった。

「第1弾はお便りをいただいた曲を中心に、ほんとに音の感覚的な部分で緩急がつくようにセットリストを作りました。順番というより、1曲1曲の思い出を振り返るという構成だったんですけれど、今回は選んだ曲も順番も意味があるというか、テーマに沿って行いました」

 オープニングとエンディングの曲があり、その間にプログラムから選んだ曲が並べられた。